日本EIMY研究所は以下の関連組織と連携して活動しています。今後、連携の輪を拡げていく予定です。
キーコンセプト
EIMY
EIMY(Energy In My Yard)とは,あるエネルギー需要体があったとき,その地域にある再生可能エネルギー(自然エネルギー)を,技術的・経済的条件が許す限り,最大限地域のために利活用するエネルギーシステム・社会システムを言います。いわばエネルギーの地産地消です。地域社会においては,もとより,エネルギーも食も住も,人の心も,いとなみも,全てがつながっています。エネルギーのことだけを考えていてはEIMYは実現しません。EIMYを実現した地域社会が増えていけばおのずと世界の再生可能エネルギーの利用は拡大するでしょうし,その殆どは未利用エネルギーであるため,それを利用できるようになれば,そこの地域の安全・安心や地域経済にも寄与することになるはずです。しかし,現実の社会はEIMYになってはいません。どうしたらEIMYを実現し,それを拡大していくことができるのかを私たちは地域実践を通して研究しています。
切り身社会
鬼頭秀一氏は,現代社会は,自然と人間との関わりがスーパーで売っている肉の切り身のように,とぎれとぎれになっており,それが今日の環境問題の本源になっていると指摘しています。資源やエネルギーについても,その源と消費者の間はとぎれとぎれになっており,それらの要素の間はお金を通してのみつながっています。そのようなシステムが,今度の震災では一挙に崩壊したわけです。
このようなシステムには二つの怖さがあります。一つはエネルギーや資源の源と我々が,直接つながっていない怖さです。この度の震災のように,一度何かがおきて供給が止まると,自分たちだけではどうすることもできず,事態は深刻になってしまいます。また,普段,我々はエネルギーを使っていても,そのエネルギーの源を考えることも,生産の現場で何がおきているかに思い馳せることもありません。つまり,エネルギー生産に対して当事者意識が無くなっているわけです。このことはエネルギー多消費型社会からの脱却や環境共生社会の実現を難しくしています。また,発電所の立地に対する市民の意識にも大きく影響を与えています。
もう一つは,とぎれとぎれになっているシステムの各要素がそれぞれの論理で発達している怖さです。現代社会では各要素は事業として経営されています。そこではコストと効率が重要視され,事業として成り立たないエネルギーは使われなくなります。その一方で,経営に有利なシステムはどんどん巨大化していきます。このため短期的経済合理性に沿ったエネルギーだけに頼る脆弱な社会になっていくことになります。
3つのエネルギー
当研究所はエネルギーには3種類あると思っています。それは「自給エネルギー」「流通エネルギー」「戦略エネルギー」です。「自給エネルギー」は,エネルギー源とその利用者が直接つながっているエネルギーで,自分達のために必要な分だけ利用するものです。そこでは,自然との共生をはかりながら持続可能に利用する必要があります。また,このエネルギーの利用は,自然の恵みを享受する行為であり,生産の喜びや安全・安心,生活の豊かさ等,貨幣では置き換えられない多様な価値を含んでいます。
「流通エネルギー」は,現代社会において我々がごく普通に用いているエネルギーです。「流通エネルギー」は,利用目的を特定せず,不特定多数を対象として商品化され,流通しているものであり,全てに共通の価値である利便性や価格,安定度などの質,汎用性などが重要視されます。また,エネルギー供給事業を通して供給されるものであるため,事業の採算性や効率が常に問題になります。「流通エネルギー」の価格は,エネルギーが生活や産業に不可欠なものであるため,そのときの経済状況,社会状況,国際状況,施策などに大きく左右されます。この度の震災では,この「流通エネルギー」が途絶してしまったわけです。
「戦略エネルギー」は「食糧」と同様に,国家規模でエネルギー問題を考える際のエネルギーの概念です。「エネルギー需給見通し」,「エネルギーの構成比」,「エネルギーの国家戦略」などを考える際に用いられ,数値化された統計量のみで表されます。我々がエネルギーのことを考えるとき,どのエネルギーについて考えているのかを意識する必要があります。
デュアル・エネルギー・パス
我々のエネルギー消費は,我々が生活するのに必要不可欠なエネルギー,社会生活を営むのに必要なエネルギー,交通,商店街等社会インフラに必要なエネルギー,産業に必要なエネルギーと次第に大きくなります。現代社会ではこれらすべてをまかなうため,高効率・高性能・大規模なエネルギーシステムが,低コストで高品質なエネルギーを供給しています。この度の震災では,この大規模エネルギーシステムのほとんどが機能停止し,地域の産業はもとより,我々の生活も困難なものとなりました。
このような「流通エネルギー」のみに依存する社会のしくみに対して,当研究所が提唱するのは,デュアル・エネルギー・パス(DEP)という概念です。これは,我々の生活に必要不可欠な分だけでも,価値基準を異にした「自給エネルギー」で最大限まかなうよう,エネルギーの筋道を二つにしようというものです。
生活に必要不可欠なエネルギーは,今回の震災の経験からみても,それほど大きなものではありません。また,産業界で求められているような高品質なものである必要もありません。そこでは効率やコストではなく,「自給エネルギー」による安全・安心と豊かさの創出に重点が置かれます。
このような自給エネルギー・パスの存在により,地域と地域の人々に,エネルギーに関する「当事者性」が生まれることになります。このことにより,エネルギー多消費型のライフスタイルや社会システムからの転換の筋道が,地域の実体として見えてくることになります。
デュアル・エネルギー・パスの考え方は,食料と水にもあてはまります。これらを総称してデュアル・ライフライン(DLL)と呼びます。